☕~在日コリアンの相続の話し①~
✏️在日コリアンと「本国法」
被相続人の特別永住者証明書の国籍・地域欄(以下「登録上の表示」と略します)に「朝鮮」と記載されている場合と「韓国」と記載されている場合にそれぞれの準拠法となる本国法の決定はどのようになるのでしょうか。
朝鮮半島出身という歴史性は同一であっても、登録上の表示が異なるに至ったその歴史的背景を時代の変遷とともに確認し、出身地域の分断による帰属意識の問題など、特別永住者の国籍と本国法の決定においては特殊な事情があります。
- 📌特別永住者の「国籍」と外国人登録上の「表示」の変遷
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年表 |
主な出来事 |
国籍 |
外国登録上の表示 |
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1910年 |
日韓併合条約 締結 |
「日本」 |
― |
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1945年 |
ポツダム宣言 受諾 |
「日本」 |
― |
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1947年 |
旧外国人登録令 施行 (後の外国人登録法:H24年廃止) |
「日本」 |
一律「朝鮮」 |
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1948年 |
朝鮮半島:「朝鮮民主主義人民共和国」 「大韓民国」二国へ分離独立 |
「日本」 |
一律「朝鮮」 |
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1950年 |
国籍法 施行 法務府民事局長通達五五四号により、 ※国籍表示「朝鮮」→「韓国」変更受付 |
「日本」 |
「朝鮮」「韓国」 |
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1952年 |
サンフランシスコ講和条約発効
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日本国籍「離脱」 |
「朝鮮」「韓国」 |
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1953年 |
朝鮮戦争休戦により南北分断 (朝鮮戦争:1950年~1953年) |
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「朝鮮」「韓国」 |
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1965年 |
日韓基本条約 締結 (在日韓国人の法的地位協定) |
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「朝鮮」「韓国」 |
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1966年
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「日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(入管特別法)」施行 外国人登録上表示「韓国」者に『協定永住資格』を付与 ※永住資格取得のため「朝鮮」⇒ 「韓国」へ変更者が増加 |
「韓国」 (韓国官憲発給の国籍証明書提出者)
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「朝鮮」「韓国」 |
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1991年 |
「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(入管特例法)」施行 外国人登録上表示「朝鮮」者も含め『特別永住者』に一本化(*) |
「韓国」 (韓国官憲発給の国籍証明書提出者) |
「朝鮮」「韓国」 |
(*)「特別永住者」には、台湾籍や中国籍などの永住者等も含まれる。
📌朝鮮半島出身者の「国籍」と「本国法」
サンフランシスコ講和条約発効(1952年4月28日AM10時30分)により、朝鮮半島出身者は日本国籍を離脱することになりますが、朝鮮戦争により、来日時はひとつだった祖国が二国へ分断されたことで、どちらに帰属意識を持つか、どちらの国を選択するかを迫られる難しい問題を抱えることになります。
その後1965年に日本は韓国と国交を結び、外国人登録上「韓国」表示の者を「韓国」国籍と正式に認め、協定永住資格を付与しました。しかし、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)とは現在まで国交を結んでおらず、外国人登録上「朝鮮」表示は国籍を示すものではなく、あくまで出身地域を示すものとされています。
では、「朝鮮」表示の者を被相続人とする場合に「朝鮮」表示が国籍を示すものでないとすると、適用する本国法の決定が問題になります。そして本国法の決定においては国籍も決定しなければなりません。
人の国籍は、その国籍があるとされる国の法律によって決めることが定められています。(「国籍法の抵触についてのある種の問題に関する条約」第1条-2条)また、各国は「国籍法」においてその取得及び喪失について規定しています。
よって、「朝鮮」表示の者の国籍については、出身地域である朝鮮半島つまり現在の韓国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のそれぞれの国籍法の規定により決定されることになります。
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の国籍法には、「共和国創建(1948年9月9日)以前に朝鮮の国籍を有していた朝鮮人及びその子であって、その国籍を放棄しない者は朝鮮民主主義人民共和国公民である(同法第2条1項)」 と規定しています。
一方、韓国で国籍法が施行される前に制定された「国籍に関する臨時条例(1948年5月11日施行)」には「朝鮮人の父から生まれた子は朝鮮の国籍を有し、父不明又は無国籍の場合には母が朝鮮人であれば朝鮮の国籍を有する(第2条1-2)」と規定し、現在の国籍法には「出生時に父又は母が大韓民国の国民である者は出生により国籍を取得する(第2条1項)」と規定しています。これらの規定から、被相続人が両国樹立前から在留する朝鮮半島出身者で、且つ、登録上「朝鮮」表示の者であれば、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)及び韓国どちらの国籍も有すると言えます。
しかし、実務上の取扱いにおいては、いずれの本国政府発給の旅券その他国籍を証する正式文書を所持するかによって国籍及び本国法が決定されます。
たとえ、被相続人の登録上の表示が「韓国」であっても、これら国籍証明書を所持していない場合(韓国へ出生届出をしていない等)は、当事者に最も密接な関係がある国として、現在及び過去の住所や近親者の居住地などの客観的要素、そして本人がどちらの国に帰属意識を明確に持っているかの主観的要素を考慮し本国法が決定されるとするのが国際私法上の通説となっています。
帰属意識を判断する資料の一つとして登録上の表示も含まれますが、その表示のみで本国法が決定されるものではありません。
日本は1950年から登録上の表示を朝鮮から韓国へ変更することを認めてきました。現在も駐在韓国領事館発給の国籍証明書(在外国民登録簿謄本)を住所地の役場へ提出することで登録上の国籍・地域欄の変更をすることができます。このような行政上の取扱いがなされていることもあり、被相続人の登録上「朝鮮」表示が本人の帰属意識を判断する客観的要素となっている側面も否定できません。しかし、上記のとおり、登録上の表示=国籍と簡単に判断できない特殊な事情があることも実情です。